12月28日、アメリカで長年活躍されたマクロビオティックのリーダー久司道夫先生(88歳)が亡くなられた。昨年の7月、帰国された際にお会いしたのが最後だった。
一年ぶりのその時は、めずらしく杖をつかれ幾分痩せていたようにも見えた。年齢のこともあり少々お疲れかと思ったが、講義ではいつもと変わらない様子だったので、まさかその時が最後になるとは思ってもいなかった。
「人生は儚き夢」とは、先生の生前の言葉だったが、こうして現実に逝かれてしまうと、本当に人生とは儚き夢の一時であることを痛感する。日頃から人智を超えた内容のお話をされていたので余計に亡くなられた実感が薄く、今でも不思議な感覚である。
先生とは40年前、私がマクロビオティックを知って間もなくお会いする機会があった。27年前にはアメリカのカンファレンスに招待していただき、ボストンのお宅を訪ねした時の思い出が懐かしい。マクロビオティック運動の将来について熱く語られ、「ブルトーザーのような同志が欲しい!」と若かった私を大いに鼓舞してくれた。
以来、15年前に創立された美容専門学校AOB(アーツオブビューティー)のマクロビオティックのプログラムに講師として誘っていただき、11年間お世話になった。その後は、KIJ(クシ研究所)の授業やカンファレンスでも一緒に仕事をさせていただき、直接、多くのことを学ばせていただいた。そんな幸運に恵まれたことに心から感謝している。
「マクロビオティックのスタンダード(標準となる教科書)を創りたいんだ」とおっしゃっていた先生は、文字通り、歴史に残る素晴らしい教科書を沢山創られた。食の活動家であり思想家であり哲学者でもあったが、世界に多くの弟子を育てた素晴らしい教育者でもあった。「教育は忍耐だよ」とおっしゃっていた言葉が忘れられない。その通り、どんな簡単なことにもじつに辛抱強く生徒に向き合っておられたことを思い出す。
マクロビオティックの創始者の桜沢如一先生が亡き後、その意志を受け継ぎ、食物による健康法を世界に広め、多くの人の生命を変え、救い、社会を変えることに献身的な努力をされた。「世界平和実現のためには、人間の生理そのものを変えなければならない」というマクロビオティックの核心を、世界で実際に実行された方だった。
晩年「肉体は滅びても心は次代の人々の中で生き続ける」「人間は永遠に死なないんだよ」ともおっしゃって居た先生の魂は、まさに、残された多くの弟子達の心の中に宿り、教科書で読まれ、これからも末永く世界に貢献して生き続けて行くことだろう。人生のすべてを賭けた食の改革活動に心から敬意を表し、衷心からご冥福をお祈りしたい。宙八
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